2013年3月11日月曜日

最近見た映画(良い映画に出会う運...)

ソフィア・コッポラ『ロスト・イン・トランスレーション』
なんとなく借りた一本。素敵な大人の恋愛映画かと思いきや全くそんなこと無かったです。シュールな笑い満載の大爆笑・珍映画でした。いきなりケツから始まるから何かと思いきやですよ。
 例えばなんですかね、ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)の前に突如現れた日本人の娼婦が「ストッキングを裂いて」と言うので渋々ながら手を伸ばすと「やめて!触らないで!」と突如絶叫し、そのまま床にぶっ倒れてボブの脚を掴んで転倒させたりしながら「やめて!触らないで!どこかへ行って!」と叫び続けながらボブの身体を離しません。発狂です。
 そしてボブがホテルのバーでウィスキーを飲んでいる所にシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)やってくるシーン。俳優であるボブはサントリーのCMの撮影で「ほっと一息、サントリータイム」と言わされた事をホテルマンと話して盛り上がっていたのか、シャーロットが「何を飲もうかしら」と言った時に、ホテルマンと口を揃えて「ほっと一息、サントリータイム」と微笑みながらグラスを傾けます。それを見たシャーロットも微笑んで、「ウォッカトニックにするわ」。ウィスキー飲めよ。




パク・チャヌク『オールド・ボーイ』
「もう勝手にやってろよ」と思ってしまいました。本当に悪い意味で"マンガ"。衝撃を与えたいだけのバカ映像のごった煮。十五年の監禁の中でイメトレを重ねて100人組み手に勝てるほど喧嘩が強くなるってなんだ。そもそもその100人組み手はなんだ凡庸な時代劇か。その組織の規模はどうなってんだ。そのハンマーはなんだよなんのこだわりだよ。結婚して子供がいる身なのに女性とのセックスを再度イメトレして結果編み出した方法がほぼレイプってなんだ。学校で姉とヤッて目撃されて噂まかれて自分で姉を殺して逆恨みってなんだ。15年監禁した上に自分の娘とヤるように仕向けるとかやりすぎなんじゃないのか。それが催眠の力ってなんだ、運良く二人とも人より催眠にかかりやすい質だってなんだ。ボコボコになって自分の舌を切らせる程に謝らせて自分は自殺ってなんだ。何が良いんだ!




ポール・トーマス・アンダーソン『パンチドランク・ラブ』
面白かった!冒頭、全く無意味に乗用車が大回転する大事故が起こって、吹き飛ぶ車の脇を高速ですり抜けて来たワゴン車が急停車してゴミ捨て場でも何でも無い路上にいきなりピアノ(ハルモニウム)をドガッと放置して走り去って行くシーンからあまりの衝撃で「パンチドランク」状態にされてそのまま一気にエンディングまで連れて行かれます。展開や設定がスリリングなまでに刈り込まれているのも壮快でした。ストレンジラブストーリーだけれど、「ラブ」が成立するための「ストーリー」がほとんど無い。二つの恋心が、不意に居合わせた磁石のN極とS極のようにハイスピードにぶつかります。それがまた美しい。
 途中ハワイのシーンになるのですが、そこで映るものが日本人のCAだったり日系人?達による阿波踊りみたいな練り歩きだったりで全然ハワイじゃないのも面白かったです。




三池崇史『悪の教典』
文芸坐で見たのですがさすがにブチ切れそうになりました。どうやったらこんな恥ずかしい映画が撮れるんでしょうか。
 そもそも人間の描き方が杜撰で、授業中に回答した後にわざわざ「東大目指してるんで」とか言うようなガリ勉は存在しないし、物理の教師が生徒にハスミンの経歴を説明する所でも黒板の使い方があまりに説明的すぎる。細部かもしれないが、人間の描き方の巧拙は細部にこそ宿る。
 そして何より何よりダサい。ダサすぎる。美術教師の豪奢な自宅でモダンジャズがかかっているシーンで「うわダセえ、居酒屋かよ」と思ったらそこからダサい映像の連続どころか肥大肥大の雪だるま。ハスミンが遂に本腰入れて大量殺戮を始めるというシーンで、学園祭のド派手なセットが照明でカラフルに輝いて、ハスミンが散弾銃を乱射しながらなんとビッグバンドによるスウィング・ジャズがかかる。最悪にダサい!!一体何十年前の異化効果のセンスなんでしょうか。
 最後のシーンを見て僕の後悔は確かなものになりました。手錠を嵌められパトカーに連れられるハスミンが、振り向いて生き残った生徒二人に「全ては神の言葉のままにやった事だ。2年4組のみんなは悪魔に取り憑かれていた」と囁くのですが、それを見た生徒が「こいつは狂ってるんじゃない。もう次のゲームを始めてるんだ」と怯えます。要するに責任能力が無い事を装うために発狂しているフリをしている。という事なんですが、そんなのどうでもよくて「ゲーム」って何だよ。目の前でクラスメートが山ほど惨殺されて自分の意中の男子も殺されたのにそれを「ゲーム」なんて呼べる人間がいるのか。ダサさの極地であり人間が描けていない証拠となるセリフ。二度と見たく有りません130分間無駄でした。
 (俳優の名前を出してないのは無論意図的です)




細田守『おおかみこどもの雨と雪』
文芸坐で『桐島、部活やめるってよ』のついでに見ました。嫌な映画を見たな...という気持ちで一杯です。
 先ずなんで狼男と子供作ったんでしょうか。子供が狼の性質を持って生まれて来る可能性は十分にあるしそこに覚悟があったように思えない。一人目が生まれて実際に狼人間で、その育て方に迷ってるにも関わらず二人目を作る。気が狂ってる。狼男との生ハメってそんなに最高なんでしょうか。
 死んだ父親の狼男は一体どれほどの高額な貯金を残したんでしょうか。都会で三年だの四年だのを全くの無収入状態で子供と自分を養って、その後地方に引っ越してボロボロの廃屋を清潔に住めるレベルにリフォームしてそこからまた無収入で暫く暮らしていけるほどの額って幾らなんでしょうか。仕事は配送トラックの運転手で何かで勤務日数も普通だったと思われますが
 そして母親ハナ。人間ってそんなに強く無いでしょう。育て方も解らない半人半獣の子供を二人抱えた所で父親が死んでその死体がゴミ収集車に投げ込まれて潰されるシーンを目の前で目撃して、そう簡単に「二人を育ててみせる」なんて奮起出来るんでしょうか。父親の顔写真(遺影代わりの運転免許証)を見て「"子供は任せた"、そう言ってるように思えた」ってもうマジックマッシュルームやってるとしか思えません。なんでそんなに幸福の方向にしか思考が働かないんでしょうか。一瞬でも後悔のそぶりを見せたりするのが人間なんじゃないんですかね。それに自分の不注意で事故死した父親が「子供は任せた」なんてバンカラで無責任な事を死して尚思ってるなんて考えられないというか、死んでしまった父親の心に対してあまりに身勝手な妄想です。
 最終的に子供二人、姉は人間の道を選び学業に励み、弟は狼の道を選んで山に入った。って結末どうなんでしょうか...。僕はスッキリしないどころか「こういう話を見たかったんだっけ?」という気分です。「もう勝手にやってろよ」と思いました。


 でもおおかみこども、映像がとても奇麗で思わず涙が出て来るシーンが幾つかありました。



ではまた。




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